大きな音について

更新日:6月4日



音量についてのご質問を立て続けにいただきましたので、今回はこちらのご質問にお答えさせていただきます。


音量が大きければ良いわけではない

いきなりこんなことを言ってしまっては申し訳ないのですが、昨今は刺激が多い時代だからか、大きな音が正義と思い込んでいる人が多いような気がします。

確かに、コンクールや演奏会では大きな音のほうが迫力があって評価される傾向にあります。しかし、それを目的にしすぎて、音色や表現を犠牲にしてしまう人をたくさん見てきました。私自身も、学生時代に音量コンプレックスに憑りつかれて音楽を見失って苦しんだ経験があります。


そもそも、フルートはそんなに音量が大きい楽器ではありません。


そこを無理してずっと張り上げるような演奏をしてしまっては、全く音楽的ではない演奏になってしまいますし、体に無駄な力が入って、余計に音が飛ばなくなります。


大切なのは、よい音が、よく響くこと

先ほど書いた通り、音量を出そうとして無理をしてしまうのが一番の遠回りです。


ご質問者のこあらさんも「たくさん息を吹くよう頑張っているのに」とおっしゃっているので少し心配です。フルートは、頑張ったり息の量を増やしたりするだけでは大きな音は出ません。


まずは自然な奏法で楽器を響かせることからスタートです。


ゆったりした気持ちで、(決して無理のない音量で)自分の理想とする美しい音を響かせてみましょう。f(フォルテ)の練習はそれからです。


f(フォルテ)で音色を失わないために

f(フォルテ)だからといって力いっぱい吹くのではなく、f(フォルテ)も美しいp(ピアノ)の延長にあると思って音作りをするというのが私の持論です。


そのための練習をご紹介しますね。


まずは一人でリラックスして、中音のド※を伸ばしてみます。

(※たくさんの指で押さえ込むことがないため、楽器を響かせやすい音です。)


自分に出せる一番美しい音を求めながら伸ばしてください。




芯があり、柔らかくもある『コシのあるうどんのような』音が出たら、その音色を壊さないようにクレッシェンドしていきます。



(譜例にはpp(ピアニッシモ)からのクレッシェンドを書きましたが、楽に吹ける音量からで良いです。)


参考までに、イメージの音を載せておきます。

(こちらはffでビブラートをしっかりかけて吹いていますが、ビブラートをかけないで伸ばす練習も有効的です。)


初めは、音色を変えないようにクレッシェンドするのはなかなかハードだと感じるはずです。


でも、この練習をしているうちに、息の角度や量、スピードが実際の音量とどのように結び付いているかが、だんだん感覚で掴めるようになってくるはずです。


ドに慣れたら別の音でもやってみましょう!


遠くに届けるという意識

いざ舞台に立って演奏する時になったら、「遠くに届ける」という意識で演奏するだけでも音の飛び方は変わってきます。


私はいつも、ホールの一番後ろの席にもう一人の自分が座っているつもりで演奏するようにしています。そこにどんな音が飛んでいるか、実際に聴くことはできなくても、もう一人の自分に聴こえているかをイメージしながら吹くことが大切です。


最後に

なぜ大きな音が必要なのか、それは音楽的な表現のためです。


世界的指揮者のリッカルド・ムーティ氏の下で演奏した時、彼はしきりに「大事なのはff(フォルティッシモ)よりもいかに繊細なpp(ピアニッシモ)を出せるかだ」「ff(フォルティッシモ)の音色が単調にならないで!」とおっしゃっていました。

そのアドバイスに従って演奏したら、オーケストラの音がみるみる変わっていき、演奏していても鳥肌が立ち続けるくらい、色彩的で美しい世界が広がりました。


もちろん荒々しいf(フォルテ)が必要な作品もあります。曲がどのようなf(フォルテ)を求めているかをよく考えて、決して力ずくや単調な音色にならないよう、ここぞというところで心を掴むために、まずは基本の良い音から、そして少しずつダイナミックレンジを広げる練習をしてみてください。



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